お礼状の書き方

お礼状には2つの意味があります。まず、1つめはお世話になったことへの”感謝状”。2つめは、相手から贈られた物が「無事届きましたよ」という”通知状”としての役割もあります。

品物を贈った人にとっては、それが到着したのかどうか気になります。お礼状は、「受取日から3日以内」には出すように心掛けましょう。本来ならば、すぐに電話でお礼を述べ、改めてお礼状を出すのがエチケットと言われています。

①書き方は親しみを出しつつ、砕けすぎない
きれいな言葉や堅苦しい言い回しよりも、素直な言葉で感謝の気持ちを届けたほうが心に響くと思いませんか。「……の候」のような慣用句だけでなく、自分の言葉で季節を表す言い回しのほうが親しみがあり、好感を持たれる文章になります。ただし、公的なお付き合いをしている方や目上の人に対しては「心に響かすため」とはいえ、あまり砕けすぎた言葉は避けたほうがよいでしょう。

②基本フォーマット
頭語
拝啓、謹啓、前略など

時候のあいさつ
新春の候、盛夏の候など
(ここでオリジナルの季節を表わす言葉を盛り込む)

安否のあいさつ
(例)皆々様には、ますますご健勝のことと、お喜び申し上げます。

感謝のあいさつ
(例)平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
(仕事の取引先などには、丁寧な言い回しで)

本文
(例)さて、このたびは、まことに結構なお中元(お歳暮)の品を
お送りくださいまして、厚く御礼申し上げます。

結び(文末)のあいさつ
(例)とりいそぎお礼を申し上げたく、お便りいたしました。

結語
頭語が「拝啓」なら「敬具」、「謹啓」なら「謹言」、「一筆申し上げます」なら「かしこ」、「前略」なら「草々」。

③入社、転勤祝いのポイント
「新天地でバリバリ働くぞ」といった決意をひと言添えること。たとえば「新たな生活が始まります。何事にもチャレンジする精神でまい進していきたいと思っています」など、心境が素直に記されていると、もらった人は、心から応援したくなります。

④出産祝いのお礼状のポイント
お礼の文章のあとに、「母子ともに順調な日々を過ごしております」といったように、母子の状況を伝えましょう。赤ちゃんが日々成長している様子や、「いずれ子どもを連れておじゃまします」といったメッセージを添えるのもよいでしょう。

⑤家族の卒業、入学のお礼状のポイント
お祝いをもらった喜びを素直に伝え、夫婦の様子も書き添えましょう。たとえば「○○は入学式を1カ月後に控え、落ち着きをなくしています。また、本人だけでなく私たち夫婦までもはしゃいでいます」といった一文を入れるだけで、お礼状をもらった相手に夫婦の幸せが伝わります。

⑥結婚祝いのお礼状のポイント
新婚らしい喜びと「暖かく見守って欲しい」といったメッセージを添えるのがポイントです。たとえば「まだまだ未熟な2人ではありますが……」「新居もようやく片付きましたので、ぜひ遊びに来てください」といった言葉を盛り込むと、もらった人も嬉しくなるものです。

⑦病気お見舞いのお礼状のポイント
お礼状は「できる限り早く出す」ことがマナーですが、例外があります。それは、病気のお見舞いをいただいた時です。あなたが治療中であれば、無理をして急いでお礼状を書く必要はありません。体調がよくなってから、あるいは退院してから送りましょう。それは決して非礼ではありません。

⑧見落としがちなマナー

●同じ人に同じ文章のお礼状は出さない

「文章を考えるのが面倒だから」という理由で、あなたはいつも同じ文章で同じ相手にお礼状を届けていませんか?

前回、前々回と同じ文章のお礼状をもらった人が、もし「お礼状ファイル」を綴っていたり、文章に敏感な人なら、あなたに対してささやかな疑問を抱くことでしょう。「どうしていつも同じ文章なの?」「なんだか心がこもってないような気がする」といったように。

つまり、手抜きしていることを見透かされるのです。もちろん、いちいちそのことを指摘する人はいません。でも、もらった相手は、あなたのことを「手抜きする人」「ズボラな人」「無神経な人」という印象を抱くでしょう。同じ人に同じ文章のお礼状を出していないか、一度思い返してみてください。

●単語を2行にまたがって書くのは×

たとえば
「拝啓 盛夏の候、皆々様にはお健やかな日
々をお過ごしのことと、お喜び申し上げます。
さて、このたびは結構なお品を賜り、厚く御
礼申し上げます。」

という文章の場合、「日々」と「御礼」という単語が2行にまたがっており、とても読みにくくなっています。単語はそれ自体でひとつの意味を成すものなので、分断するような改行をしてはいけません。文章は、あくまでも相手にとって読みやすいことを最優先してください。読みやすさ、わかりやすさを心がけることが、お礼状を書く際の大切な心構えです。

頭に自分、末に相手はNG

お礼状のみならず、手紙やハガキの文頭は、「拝啓」や「前略」など頭語から始め、文末に自分の名前を記すのが基本フォーマットです。文頭に自分の名前、文末に相手の名前を書くことは、たいへん無礼です。せっかくのお礼状が、相手を激怒させるものになっては、文字どおり本末転倒。くれぐれも間違いのないように。

⑨お礼状を出し忘れたときは?
事後4日以上経つなら、お礼状の主文の冒頭にお詫びの言葉を加えましょう。

「雑事に追われ、お礼を申し上げるのが遅くなりまして誠に失礼致しました。」のように、遅くなった理由を簡潔に述べるのもコツです。

利便性が高まり全ての手順がシンプルで簡素化される一方、人と人との心の距離はますます遠ざかっているかのように思える現代。一通のお礼状を通して、自分の素直な気持ちを伝えていく行為はアナログ的で少々古めかしいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、こんな時代だからこそ自分から気持ちを発信し相手に近づいていく努力がより重要なのだと思います。