料理によっての乾杯のマナー

日本ではお酒は神様への供物のうちのひとつ(お神酒=おみき)であり、収穫を祈る神事や、元服や戴冠などの儀式、結婚式の三三九度のかための杯など重要な儀式に用いられてきました。戦にのぞむ前に酌み交わしたお酒も、神聖な意味を持ち、現在の陽気な乾杯とは一線を画すものです。
 当時は、酒の肴までも縁起をかつぎ、縁起の良いものが供されていました。但し、現在では、豊作を祝う祭りなど、和室の場合には日本酒を用いられるシーンでも乾杯全般において、洋風の「乾杯」の号令が用いられるようになってきています。大半が座ったままで行なわれます。
ここでは料理の種類と乾杯についてご説明します。


日本食/和食】
●鏡開き(かがみびらき)
パーティーや式典の会場で、樽に入った酒の蓋を数人で木づちで割り、枡酒をふるまうことがあります。
このとき、「鏡開き」という言葉が使われますが、鏡割りの「割る」が忌み言葉のため、縁起をかついで、鏡開きと呼ぶようになったものです。
また、本来は、「鏡開き」ということばは、正月の鏡餅(かがみもち)を正月過ぎに割って食する習慣のことをさしており、樽酒の蓋を割ることは「鏡抜き」が正しい表現だとされてきましたが、近年は、一部の国語辞典などでも、酒だるの蓋をあけることを鏡開きとして掲載するようになってきました。

●枡酒の場合も、杯の場合も、乾杯の作法としては、原則として下記のとおりです。


日本食/和食の席での乾杯]
1.全員に飲み物がゆきわたったところで、決められた人が「乾杯」の声(合図)を発する

2.合図のあと他の一同が声をそろえて「乾杯」と唱和し、飲み物を高くかかげるか、近くの人と枡や杯を軽く合わせてカチンと鳴らす。

3. 一旦飲み物に口をつけてから、料理やつまみに箸をつける
というのが一般的です。

●和室での宴会、宴席の場合には、乾杯の場合にも立ち上がらず座ったままで行なわれることがあります。

 


【洋食】
●洋食と言えば、ワインが浮かびますが、大勢が出席するパーティーの席でワインが用いられることは日本ではあまり多くありません。
乾杯の作法としては、下記の通りです。

 

[洋食の席での乾杯]
1.全員に飲み物がゆきわたったところで、決められた人が「乾杯」の声(合図)を発する

2.合図のあと他の一同が声をそろえて「乾杯!」と唱和し、飲み物を目の高さまで高くかかげる。(ビールのジョッキの時には、近くの人とカチンと合わせて構いません。ビールのグラスも、足付きの薄いガラスではなくコップタイプの形状であればカチンとならしても構わないでしょう。)

3. 一旦飲み物に口をつけてから、料理やオードブルに手をだす
というのが一般的です。

●ビールの場合には、ジョッキという丈夫な入れ物に入っていますので、乾杯の合図のあと近くの人とガチンとジョッキ同士を合わせることができ、この音もまた愉しい演出となります。元気良く楽しみましょう。

●ワインは、日本の場合は恋人同士や夫婦、家族などを中心としたプライベートな集まりや、少人数のホームパーティなどで用いられるケースが多いようです。
ワインの場合は、「乾杯」と唱和する際にはグラスを目の高さに持ち上げるだけで、グラス同士をぶつけることはしません。

シャンパンもまた披露宴やパーティーなどを中心にして良く用いられるお酒です。シャンパングラスも薄く割れやすくできていますので、もしも近くの人とカチンと音をたてて合わせる時には注意が必要です。そっとおこないます。


●通常、日本国内の中国料理店で、日本人だけのグループで乾杯を行なう場合には、ビールをグラスに注いで乾杯する等、通常のわたしたちが行なう宴会の場合に準じます。

 


【中国料理/中華料理】
●中国での乾杯 (この情報は友人Yより得ました)
中国では、乾杯のことをカンペイと言いいます。
最近は中国での食事会も欧米化してきているため、伝統的な乾杯の方法も都市部を中心に変化してきているようです。

取引先を招待して行なうような、やや格式のある(伝統的な方法の)食事会の場合、小さなグラスに非常に強い酒(白酒または紹興酒)が注がれ、完全に飲み干したことがわかるようにグラスを逆さにしてみせます。「カンペイ」の発声者がすぐに「スイイー(随意)」と続けた場合には、飲み干さなくても良いことになっています。
カンペイの発声の前に一言話す、という点は日本と同じですが、「漢詩」などが披露される場合もあるようです。

 


【韓国料理】
●通常、日本国内の韓国料理店で、日本人だけのグループで乾杯を行なう場合には、ビールをグラスに注いで乾杯する等、通常のわたしたちが行なう宴会の場合に準じます。

●韓国での乾杯 (この情報も友人Yより得ました)
 韓国では乾杯のとき「コンペ」と言います。ビールを注いだグラスをコツンとぶつけあうのですが、相手グラスの唇があたる部分よりも少し下のあたりをねらってコツンとやると相手に対してこちらがへりくだった形になり、敬意を表していることになるそうです。
 コンペの場合、できるだけ一気飲みをすることが礼儀になっており、焼酎の場合にはグラスが小さめになっています(韓国の場合には、ビールよりも焼酎でのコンペが一般的なようです)。
 また、伝統を重んじる酒宴の場合には、目上の人に顔を向けて飲むのは失礼とされ、その宴席で最も上の人以外は顔を横に向けて飲みます。左手で目上の人から自分の顔を隠すようにしてお酒を飲むのが礼儀正しいマナーとされています。
 それから、相手のグラスには、杯が空になってから注ぎ足すことと、一つの宴会で何度も「コンペ」の発声がされることが日本の乾杯と大きく異なる点です。