活気ない会社で働く社員の「ある特徴」

●生産性が上がらないのはなぜ?

「うちの会社は、社員に対して良心的な条件を与えていると思う。それなのに、どうして生産性が上がっていかないのだろう?」――企業の社長さんから、ときどきこんな話を聞くことがあります。

職場の環境は良好、報酬は業界平均を上回っている、残業が多すぎる訳でもない――つまり、会社は社員に喜んでもらえるような労働条件を提供している。それなのに、どうして社員のやる気も、生産性も上がっていかないのでしょう? その答えのカギを握るのが、社内の「人間関係」。とりわけ、社長の目には届きにくい「インフォーマル」な人間関係が、この問題に影響している可能性があります。
ここで、「ホーソン実験」という有名な労働心理学の学説をご紹介しましょう。20世紀初頭、ハーバード大学のメイヨーらによる研究グループが、大手電話機メーカーの工場において、作業効率の実験調査を行いました。まず照明の明るさと作業効率との関係を調べましたが、大きな差は現れませんでした。また、賃金や休憩、昼食の支給など、時間的条件や経済的条件を変えて実験してみましたが、決定的な差は現れませんでした。
では、そうした「条件」よりも生産性に影響を与えていたものとは、何だったのか? それは、働く人たちの「人間関係」だったのです。つまり、一緒に働く者同士がコミュニケーションを取り合いながら、よい雰囲気で働くこと。このように、ある組織内にいる人が自主的に、自由につくる非公式の人間関係の集まりを「インフォーマル・グループ」と言いますが、労働意欲はこの集団の雰囲気に左右されることが分かりました。

 

●インフォーマル・グループの雰囲気に注目!

一般に、企業のトップが把握する社内の集団は、公式的に割り当てられた「フォーマル・グループ」です。一方で、社内にどんなインフォーマル・グループがあり、どんな会話を交わしながら仕事に向きあい、刺激を与えあっているのか――こういう“瑣末”なことには、目を向けていないのではないでしょうか?

しかし、いくらよい労働条件を与えていても、その会社で働く人たちの雰囲気が悪ければ、生産性は低下してしまいます。
たとえば、相性の悪いメンバーとチームを組まされる職場。冗談や世間話を交わし合う相手もいない職場。不真面目な社員が野放しにされ、雰囲気を乱している職場……。こんな職場では、そこそこよい給料をもらっていても、社員のやる気は失せ、仕事で工夫をしてみたり、能率を上げてみよう、などいう気持ちなど湧かなくなってしまうでしょう。
逆に、チーム内の仲がよく、「最近大変そうだね。手伝うよ」「一緒にやっていこう」といった言葉が飛び交う職場。食事会などが社員同士で自主的に催され、仕事の目標や会社でやりたいことを、自由に楽しく話し合える職場はどうでしょう? こうした職場なら、仲間に恵まれ、仕事を楽しく感じるはず。そのため、多少労働条件に不満はあっても、「頑張って働こう」と思うものではないでしょうか?

「グチっぽい空気」を甘く見てはいけない

 

インフォーマル・グループの不満を放置していると、生産性は低下する一方です。とくに、会社や上司に対する不満がくすぶり、グチが蔓延しているような会社は、要注意です。
そもそも、「仕事にグチはつきもの」と言われます。グチは鬱屈を解放し、直面している問題を明確にし、解決の糸口を見つけていく機会でもあるのです。
しかし、そのグチが“蔓延”してしまうのは、「アクションを起こしたところで、所詮何も変わらない」という、落胆とあきらめの気持ちが強いからでしょう。そうした会話が仲間内で飛び交うようになると、「集団極性化」が起こります。つまり、集団の中で議論を重ねることで、個人で思っているときよりも、極端な結論に流れやすくなるのです。
たとえば、個人レベルでは「あの上司、ちょっとなぁ」「うちの会社、大丈夫かな?」くらいに思っていた考えが、集団の中でグチのやりとりをしているうちに、「あの上司は自分勝手で無能!」「うちの会社はダメな会社」というように、極端な意見にまとまりやすくなる傾向があるのです。
このように、ちょっとしたグチから“不信感”に発展していくことは、少なくありません。こうなると、生産性どころの話ではありません。惰性で仕事、退職者が続出――社内は、いつしかこんな雰囲気に変わってしまうでしょう。したがって、企業のトップの方は、社員の人間関係やその雰囲気に目を向け、「グチっぽい空気」を放置しないように、気を配らなければなりません。
そのための第一歩としては、社員同士の「横のつながり」を奨励しつつも、「上下のコミュニケーション」も大切にすること。グチや不満も含めて社員の話によく耳を傾け、意見を「聞きっぱなし」にせずに、改善に役立てること。

上司がこうした姿勢を見せれば、社員のグチも減って、インフォーマル・グループの雰囲気は良くなっていきます。すると、労働意欲も高まり、生産性も向上していくと思います。

 

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小さなことに耳を傾けて、改善し続けます。