スポーツ選手に学ぶ成長の秘訣 イチローは“言葉”に敏感!

メジャーリーグの年間安打新記録を樹立したイチロー。それを可能にしたのは意外とシンプルな力でした。そこには人間関係をよくするコツ、さらにはコーチングを行う秘訣までもが隠されていたのです。

 

イチローが素晴らしいプレーをできる秘密

確かに、抜群の身体の柔軟性、バットコントロールの巧みさ、正確にホームに送球できる強い肩などなど、イチローが生まれつきの天才、もしくは並外れた努力の産物であることには間違いありません。でも、それは誰にもマネできないものなのでしょうか? ビジネスに生かせるものはないのでしょうか?
実は、イチローの秘密はだれもが持っている力にありました。もちろん、あなたも持っているものです。そのキーワードは、「乾いたボールと湿ったボール」。さて、どういうことでしょう?

 

●ボールの重さを感じる力

最初に一つ質問です。
野球のボールの重さは日によって違うと思いますか?
「日によって重さが変わるわけないよ。」これが普通の答えでしょう。ほとんどのプロ野球選手も同じ答えです。しかし、イチローは明確に「違う」と言うのです。
これはメンタルトレーナーの高畑好秀さんが、オリックス時代のイチローと話したときの逸話です。イチローから高畑さんは二つのボールを渡され、どちらが重いかどうかについて聞かれたそうです。高畑さんはどちらも同じ重さにしか感じられなかったそうですが、イチローはこう言ったといいます。

「湿気を帯びている分だけ、こっちの方が重い」
イチローは湿気という微妙なものが与える影響までも意識することができたわけです。そして、その微妙な重さの違いによって、投げるフォームを変える。これは、打つときも同じです。ボールと同じように、湿気の違いによるバットの重さの違いを感じ、それに応じてバッティングフォームを微調整しているのです。
どのボールも同じ重さだと思い込んでいる選手と、ボールには重さの違いがあると思っているイチロー選手とでは、その感じ方、そしてプレーの質に差が出るのは当たり前です。

 

●相手の状態を感じる力

それでは仕事の場面で考えてみましょう。
例えば、簡単なところで、「おはようございます」という挨拶を取り上げます。
「おはようございます」
毎日繰り返される同じ言葉。ほとんどの人にとっては、“同じ言葉”ですし、そう思い込んでいるでしょう。でも、もしイチローだったらどう受け取ると思いますか?
乾いたボールと湿ったボールの重さを感じるように、イチローなら、例えば、乾いた「おはようございます」と湿った「おはようございます」の違いを感じるでしょう。同じ「おはようございます」という言葉であっても、すべて同じだと思い込まずに、その微妙な違いに意識を向けていくはずです。
そして、その違いによって、対応を変えていく。例えば、その人にかける言葉の種類、言い方、ペースなど、その巧みなバットコントロールと同じように、相手の状況に応じてさまざまなコミュニケーションを使い分けるでしょう。
まずは、相手の言葉のさまざまな側面に意識を向けてみましょう。例えば、「その言葉の”重さ”はどれくらいでしょう?」。重さだけではなく、速さ、滑らかさ、高さなど、いろいろな側面が考えられます。まずは手始めにそんな側面に意識を向けて、言葉それぞれの違いに気づいてみてください。


●大事なのは「同じではないかもしれない」という好奇心

当たり前のように毎日繰り返される言葉。いつも変わらぬ見慣れた職場のメンバー。毎度お馴染みで食べ飽きた社員食堂のランチ。変化のない日常に、「いつもの挨拶」「変わらぬ部下」というように、自動反応しているあなたがいるかもしれません。そして、何か新しいものを求めて、違う会社や仕事、別の課や部の社員、話題のレストランなどに、次々と興味を持ち、うらやましく思っていませんか?
でも、変化していないのは実はあなた自身かもしれません。一見同じように聴こえる言葉、見える部下、感じる食事。そこに好奇心を向けてみましょう。
「もしかして、いつもと同じでないかもしれない」
そんな好奇心が、あなたの感覚を開き、研ぎ澄まし、微妙な違いを意識させてくれます。そして違いが感じられたら、それに応じた行動の選択肢が考えられます。さらに行動の幅が広がっていきます。「デキル」といわれるビジネスマン・ビジネスウーマンは、意識するにせよ、無意識にせよ、こんな微妙な違いをとらえて、臨機応変に対応しているものです。
ついつい、彼らが出す結果や、行動、そして目に見える能力に目を奪われがちですが、実はそれを支えているのは、微妙な違いを見て・聴いて・感じられる力なのです。


コーチングにおける好奇心と質問の重要性

「もしかして同じではないかもしれない」「もしかして自分は知らないかもしれない」。
こんな好奇心がコーチングにとっては重要です。これによって、相手の中に隠れている可能性や変化に気づくことができるからです。
「いつもと同じ」「こいつは変わらない」「そんなことはわかっている」。
こんなふうな“知ってるつもり”“分かったつもり”では、相手の可能性にも変化にも気づくことができませんし、相手の可能性や力を引き出すことができません。

そして違いを明確にして、新たな世界を切り開いていく具体的なカタチが質問です。好奇心を持つと自然と質問があふれてきます。そして、質問が意識の焦点を決めていきます。
「この二つのボールのうち、どちらが重いですか?」
この質問で勝手にあなたの意識は二つのボールの重さの違いに焦点があっていきます。
もちろん、「同じ重さだ」という答えが返ってくるかもしれません。大事なのは、そのときに、「もしかして違うとしたらどうだろう?」と好奇心を持ちつづけられるかです。質問をし続けられるかです。
おそらく、イチローはいつも好奇心をもって、常に自分に質問を投げ続けているのだと思います。そして、質問を投げつづけた結果、だんだんと感覚が研ぎ澄まされ、違いを明確に知ることができるようになったのでしょう。
ついつい好奇心は鈍りがちです。“わかったつもり”になったほうが楽なので、好奇心はついつい閉ざしてしまいます。コーチは、そんなふうに鈍り、閉じた相手に代わって、好奇心を持ちつづけ、質問を投げかけつづける存在なのです。そして、その好奇心、質問に相手は呼び覚まされ、自らの好奇心を目覚めさせ、可能性に気づいていくのです。


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日々の積み重ねですね・