ホントに大企業は「働きやすく」、ベンチャーは「働きがいがある」のか?

●社会的信頼・安定など「働きやすさ」なら大企業?

Aさんは、素直で真面目だけど、ちょっぴり頑固な面もあり、自己主張が苦手なタイプの、ごく平凡な男性。そんな彼が新卒時の就職活動で選んだ会社は、一部上場・社員数1000人を超える、いわゆる“大企業”でした。

当時、大企業を選んだ理由は“安定”を求める思考が強かったからだといいます。
彼の言う安定とは、「休みがきっちり取れる」「長く働けそう」「簡単に会社が潰れない」「ボーナスがでる」「知名度」・・・という要素でした。一方、働く以上は「何らかの成果を出したい」という野心も持ち合わせていました。

日常生活において、“大手企業”の冠はメリットが多くあったそうです。
社名を名乗るだけで、親族間ではちやほやされ、初対面の人からの印象も良く、飲食店の予約時ですら、「いつもお世話になっております!お席、なんとかします!」と融通されることがあったとか。大手特権おそるべし。

会社の制度も整っていて、有休・育休はもちろんのこと、勤続年数が一定以上の社員にはロングバケーション制度という10日間ほどの特別休暇が与えられ、ワーク・ライフ・バランスが充実していたそうです。

 

●大企業勤めの壁。それは「出世争い」と「窮屈さ」
順風満帆だったAさんの大企業ライフですが、数年勤めているうちに不満・不安要素も募っていったそうです。

その1つが出世における大きな壁・・・古くから根強く残る「学閥問題」でした。社内では、学閥の後押しで昇進の推薦がもらえることが少なくなく、Aさんはいくら頑張っても学閥の力学を超えて上を目指すことが難しい環境だったのです。

また、もう1つの不満要素が「業務の窮屈さ」でした。大企業ゆえ、社内外に関与者が多く、1つの物事を進める上での調整ゴトの多さ、通すべき稟議決裁の多さに心すり減る日々だったと言います。

仕事に関しても、縦割り主義・分業主義が浸透し、自分が担当する工程はあくまで「全体の中のほんの一部」という実状。どこかが停滞すれば、自分の仕事もストップしてしまう歯がゆさがあったといいます。

 

●「働きがい」「出世」「スキル」を求め、ベンチャーへ挑戦

そうした不満を解消しようと、入社から4年後、Aさんはベンチャー企業への転職を決意しました。周りからは「勇気あるね」「今の知名度を捨てるなんて」などと言われたそうです。

業種こそ変えなかったものの、少数精鋭のベンチャーでは今までとは違い、「外注する」という概念がほとんどなかったそうです。外注すればするほどコストがかかるので、その分自分たちで何とかせよ、というのが基本ポリシー。

社内稟議等の調整ゴトもあってないようなもの。妙案があれば即トップ判断を仰ぐことができ「やってみろ」となります。そのスピード感は快感でしたが、反面、求められる責任感と業務量も増大したそうです。

また、業務マニュアルが整備されているわけでもなく、仕事のやり方を丁寧に教えてくれる人がいるわけでもない環境。常に自分で考えてトライ&エラーで仕事をし続けなければなりませんでした。

業務範囲の線引き(部署の垣根)が明確化されていないことも多々あったそうです。クライアントからの依頼には、自分が「出来るだけ受ける」「とにかくスピーディに対応する」ことが必要でした。大企業勤めの時と違って、そうしなければ競合他社に勝てない側面があったからです。仕事の川上から川下まで、ざっとでもいいからまずは自分が遂行する必要がありました。

時には土日返上で対応せざるを得ないこともあったものの、知識やスキルは前職とは比べ物にならない勢いでついていったそうです。

 

●ずっと働き続けられるのか・・・?ベンチャーで感じた疑問

ベンチャーへの転職で念願の「働きがい」を手に入れ、多忙な環境の中でふんばり続けたAさんは、転職から2年ほどで念願の出世を果たしました。そんなAさんを新たに待ち構えていたのは、「会社を成長させるには」という経営レベルの目標とさらなる責任感でした。

前職より社内行事も格段に多く、飲み会・合宿・定期総会と実に様々なイベントがありました。社員同士は仲が良く、学閥などの政治的要素も皆無でしたが、いつの間にか四六時中「会社と仕事」を中心に考える生活になっていたそうです。

Aさんにとっては、役職がついたことは大きな自信となりましたが、ベンチャー企業に転職してくる人の中には、社風に馴染めなかったり、ワーク・ライフ・バランスが不十分なため、体調を崩して去っていく人も少なからず見てきたそうです。

ベンチャー企業は、確かに早い成長を見込める環境ではあります。しかし、「ずっと短距離走の100本ノックが出来るのか?働きがいがあるからといって、長く働き続けられる環境なのか?実際に長く働いている人は少ないな・・・」と深く考えるようになったのです。

 

●自信をつけて大企業勤めにカムバック
ベンチャーに勤めたことで、「働きやすさ」の大切さにも気付いたAさん。
3年後、ベンチャー時代の実績と肩書きを引っさげて、今度は大企業への「役職付き」の転職に成功しました。

ベンチャーでは出来なかった大きなプロジェクトのリーダーを任されるようになり、給料アップも果たすことができました。プレッシャーはあるものの、『ベンチャーの時ほどの大変さではないし』と思えるそうで、臨機応変な対応力を武器に、縦割りの業務範囲を超えた仕事ができるようになったそうです。

 

●まとめ

世の中には「メリットづくめで一石三鳥!」なんて美味しい話は、仕事に限らずありません。(もしそんな話が来たら、一度は詐欺と疑いましょう苦笑)

Aさんのエピソードから言えることは、「大企業とベンチャーのメリット / デメリット」をいかに自分のキャリア形成の推進力に変えられるかどうか・・・ということではないでしょうか。

 

https://next.rikunabi.com/journal/entry/20170922_D1

 

『隣の芝は青く見えるもの』といいますが、今、自分の中にある不平・不満は「どの程度のものなのか、「どうして起こっている」のか、「何をすれば解消される」のか、を冷静に整理して考え、行動に移していければ、「働きやすさ / 働きがい」のちょうど良いバランスを見つけることができるかもしれませんね。