新しい時代の「リーダー」に求められる10の要件とは?

【1】課題設定力、先見性、仮説構築力、大局観

 連続成長の時代は、課題解決の時代だった。課題はある程度、明確に設定できており、それをいかに早く効率的に解決するかの勝負だった。そのためのスキルやノウハウが意味を持った。これからの非連続の成長時代に求められるのは、課題を自分で設定する力。適切な課題設定ができるか、が勝負の行方を分ける。

 

【2】変化抽出力、変化適応力、カオス耐性、胆力

 イノベーションには、今までの成功の再定義が必要。それは自己否定にもつながる。新規ビジネスを守るために反対者や抵抗勢力に説明し、納得感が醸成できるか。これからの経営トップには、破壊的なイノベーションが社内闘争でつぶされないような環境整備をし、経営資源の再配分を意思決定していく強いリーダーシップ、共創型リーダーシップが求められる。

 

【3】素直さ、伸びしろ、学習能力

 経営人材を目利きするとき、最も重要視してきたのは実は素直さ。社内や顧客に対する思いの熱量はありながら、それを実現するためには自己革新をいとわないという素直さ。これは、未来への伸びしろとも言い換えられる。環境の変化に柔軟に適応できるか。他者からの指摘に耳を傾けられるか。他業界で行っている事象を学びに行って、自社戦略に活かせるか、が問われる。

 

●成長の機会を自ら作り出し、「レアキャラ」になる

【4】自己効力感

 やったことがないことに出会ったとき、「私ならこれをやれそうだ」と思える力が自己効力感。過去の自分に対する自信、自己肯定感とは違う、未来の自分に対する自信。多くの経営者に今の成功のきっかけを聞くと、戻ってくるのが「修羅場体験」。このとき、怖さに打ち勝てたのは、自己効力感があるから。チームで「チーム効力感」を醸成する能力も求められる。

 

【5】比較優位となる強み(タグ)の認識と、機会開発力

 これからは多くの仕事がAIに取って代わられる。そうなれば、人間にしかない強みで戦うしかない。その強みを考えるとき、なるべく離れた種類の強みを複数、掛け算にすることで、その比較優位性は増す。例えば、「音楽業界の経験×データ・サイエンス・スキル×マーケットインサイト抽出力」「人を巻き込む力×ヘルスケア領域の知見×仮説構築力」。強みを増やすためにも、成長の機会を自ら作り出し、「レアキャラ」になる。

 

【6】多様性受容力

 いろいろな物事を面白いと思えるかどうか。自分の得意領域とはまったく違うものを面白がれるか。違う視点からの意見をもらったときに、「お、それもあるな」と思えるか、という力。極端なケースだが、ピンクの髪やビーチサンダルで会社にやってくる異端の人材をリーダーとして受容し、マネジメントできるか。

 

【7】越境力、領域をつなぐ力

 イノベーションは、離れた領域を新結合することで生まれる。越境力は、その離れた領域をつなぐと、どう面白いのか、文脈をつくる力。領域を越境して新しい価値を創造するプロデューサー機能。意図して、別の世界から学びを得たり、異能の人材と交流を持ったりすることが大きな意味を持ってくる。

 

●不確実な状況で、不確実なことを意思決定する能力

【8】共感力、熱量、物語力、チャーミングさ

 個人のカリスマ型リーダーシップではなく、チームでイノベーション創出をする「共創のリーダーシップ」がこれからは必要。ここで求められるのが、「共感させる力」。論理的に説明するだけではなく、情理にも配慮してワクワクさせられるか。意義という概念だけでなく、概念の背景にある「手触り感のある物語」「自分も追体験できるような物語」がつくれるか。チャーミングさは、成功する経営者の条件のひとつ。

 

【9】機会提供力、コーチング力、環境整備力

 破壊的イノベーションの種は顧客接点にある。そのためには現場の委任、権限委譲が必要。また、リーダーの仕事は今、ティーチングからコーチングへと、どんどん移ってきている。メンバーが自発的自律的に動き、健全な議論を実行できるような環境と、その議論のベースとなるようなメンバー同士の相互信頼の文化を整備することが重要。

 

【10】意思決定力、実行力、仮説検証スピード

 これまでの成功モデルが通じない時代。重要なのは、不確実な状況で、不確実なことを意思決定する能力。どちらを選択しても、大きな副作用が想定できるような事案で意思決定する力、タイミングをとらえる力。これは先天的な能力ではなく、経営トップとして意思決定した場数でしか鍛えられない。

 

 この10の要件を早く手にするためにも、若い世代にアドバイスするのが、自ら難しい修羅場に飛び込んでいくことだ。

「経営大学院や企業研修などで入社10年ほどの人たちに会うと、決まって聞こえてくる言葉があります。ポジションが与えられていないから、リーダーシップなんて磨けない。部下もいないのに、リーダーになんてなれない。役割をもらえていない……。しかし、勘違いしてはいけないのは、会社が何かしてくれるのを待っているだけでは、リーダーシップは磨けない、ということです。実際、同じように入社10年しか経っていないのに、しっかりリーダーシップを身につけている人たちもいるのです」

 

実は傍流のほうが力がつく。学べる機会にこそ飛び込め

 役職やポジションに関係なく、その場を何とかしないと立ち上がり、フォロワーをつくりながら変革を成し遂げていく。そういう機会は間違いなくある。東日本大震災のときには、さまざまな場所でさまざまな属性のリーダーが立ち上がっている。

「もうひとつのアドバイスは、傍流に自ら飛び込むことです。今は昔のエリートコースのようなものはない。むしろ、主力事業でないところや関連会社など、傍流のほうが力がつく。ビジネスはスムーズにいかないし、人材も足りないからです。実際、新卒での関連会社出向から最年少役員になった人もいます」

 そして若い世代は、テクノロジー・リテラシー、テクノロジー・ネイティブという武器を最大限に活かすためにも、できるだけキャリアの早い時期に、進んで不確実な状況での意思決定に関われる場数を積んだほうがいい。

「スキルや知識を学んでいくだけではなく、機会を見つけて修羅場に飛び込むんです。社内評価の上がる仕事ではなく、厳しい体験を積むことを選ぶ。それが間違いなく30代以降に効いてきます」

 不確実な時代には、年齢や経験、過去の資産は通用しない。これまでとは違う経営者をつくっていかないといけない。これは40歳以上の世代にとっては不都合な真実かもしれないが、40歳以下の世代にはリスクがあるのだと。

「彼らは長期間のキャリアを築かなければいけないからです。中高年は、この先、今のままで逃げ切ることができるかもしれませんが、若い世代は逃げることができない。自分たちの新しい未来を、自分たちでつくっていかないといけないんです」

 

https://next.rikunabi.com/journal/entry/20171228_D1

 

今ちゃんと努力をして未来につなげていきます。