仕事ストレスの処方箋は「日本人の美徳」!

●「真面目に働いてさえいれば・・・」
そんな言葉、もう誰も信じていない

 かつて、年功序列制度に守られてきた日本では、「真面目に働いてさえいれば、必ず報われる」という言葉が合言葉でした。実際、高度経済成長時代の会社文化を謳歌した親に育てられた私も、小さいときからいつもこの言葉を聞かされて育ってきました。

しかし、90年代に入ってからは、この言葉はパッタリ聞かれなくなりました。バブル経済の崩壊における雇用調整とともに、この言葉を信じる人が誰もいなくなってしまったのです。経済不況に翻弄される親たち世代の悲劇を見てきた若者たちは、「どこで働いても使い物になる人間になる」ことを目標にして、社会にデビューしていったように思います。

それと同時に、いまや働く人の関心は「いかに、楽して儲けるか」というテーマにシフトしています。ライブドア事件村上ファンド事件が起きたあとでも、株式投資への人気や関心がなくならないのは、地道に働くことへの疑問や閉塞感が背景にあるからと言えるでしょう。

 

●日本人が好きな仕事のモラルって何だったの?

 バブル崩壊とともにだいぶ様変わりしてしまったように思いますが、もともと日本人が好む仕事のモラルとは、どんなことだったのでしょう?私はひとつ上げるとするならば、自分や家族のためもさることながら、「理念に共感した人、組織のために働くと」という理由が大きかったのではないかと思います。
たとえば、「ほれこんだ社長のために尽くす」「会社のために身を粉にして働く」というように、プライベートな事柄に以外にも動機を持つ人が多かったように思うのです。しかし、雇用調整や成果主義の導入以降、評価の対象にならない労働を自発的に行う人は少なくなってしまいました。
いまは完全に死語になってしまった言葉に、「滅私奉公」があります。自分を犠牲にして、組織や社長に尽くして喜んでもらう。華々しい成功の裏に、自分の地道な尽力があることを認めてもらえることがうれしい。しかし、今ではこのような自己犠牲の価値観を振りかざしていると、下手をすれば「共依存」として病理を疑われてしまう可能性まである世の中です。
もちろん、昔の「滅私奉公」の価値観に戻ることが、企業のためにも働く人のためにもなる、というわけではないでしょう。しかし、「自分のため」だけを動機にした人だけが組織に集まるとどうなるでしょう?チームワークが悪くなり、ひいては企業利益の損失に結びつくのではないでしょうか。

 

●「おかげさま」「お互いさま」精神の復活を!

 バブル崩壊後、日本人が学んだ価値観は「自分を大切にする」ということです。自分はオンリーワンであるという意識を常に持ち、仕事の上でも自分のオリジナリティを発掘して生かす努力をすることが、終身雇用制崩壊後に求められてきた働き方でもあります。
しかし、会社に限らず、どんな集団や組織でも「自分の利益」を優先したがる人が増えると、チームワークや職場の雰囲気が悪くなり、結果としては組織としての生産性が低下してしまいます。

そこで、私が提唱したいのが、日本人になじみのある言葉である「おかげさま」と「お互いさま」の発想を復活させることです。いまやこの言葉は、若者の間ではほとんど聞かれなくなりました。しかし、これらの発想こそ、チームワークを改善し、組織を活性化させるエッセンスになるのではないかと思います。

「おかげさま」や「お互いさま」に代表される相互扶助の精神は、日本に古くから根付いてきた美徳でもあります。こうした日本的な「美徳」を見直すことこそ、日本経済を活性化させる原動力になるのではないかと思います。ダイエー会長に就任した林文子さんのワーキング・スタイルに近いものと、想像してみてください。

働く人ひとりひとりが「オリジナリティ」を開発すると共に、相手を価値を認める「おかげさま」「お互いさま」を生かすゆとりが生まれたときに、はじめて働くことにやりがいが生まれ、活気のある組織へと生まれ変わるのではないかと思います。

 

●日本型「美徳ワーキング」3つのオキテ

 とはいえ、なかなか個人レベルでそうした組織に生まれ変わらせるのは、難しいものです。しかし、「トップが変わらなきゃ」と嘆く前に、まず個人レベルでこの「おかげさま」「お互いさま」を復活させてみてください。ここでは、個人レベルでも実践できる3つのポイントを提示します。

「公式」チームでの実践が難しければ、同僚や仲良しグループの「非公式」チームでもかまいません。とにかく、一人でも多くの人が「オリジナリティ」と「おかげさま」「おたがいさま」の融合を意識することが、働くことによるストレスを軽減させるきっかけとなるからです。

①「~のおかげで」を入れつつ、アピールする

商品や自分の功績をアピールする場では、自然に「~のおかげで」の一言が言えるようになることが大切です。口だけでは、意味がありません。普段から「成功は自分一人の力で達成するもの」とは考えず、「今日の自分があるのは、誰かのおかげである」と常に意識しながら生活することです。

 

②「オリジナリティ探し」ミーティングの開催

その人らしい「オリジナリティ」は誰にでもあり、それがどんな場面で生かせるのか、チームで話し合う機会を持ちましょう。「あなたにはこんないいところがある」「こんなことをしてもらって嬉しかった」など、自分では気がつかない「その人らしさ」がビジネスシーンで生きていることがあります。それをお互いに指摘しあい、自分らしい働き方を確立するきっかけをつくりましょう。

 

③クレームや失敗、ストレスも分かち合う

クレームを受けたり失敗した場合には、一人でその問題を解決させるのではなく、チーム全体で分かち合いましょう。クレームや失敗の分かち合いは、相互扶助のシステムを強固にするための絶好の機会です。また、チームの誰かが悩んでいたら放っておかないことです。個人のストレスにも配慮する姿勢が、相互扶助には必要です。

 

https://allabout.co.jp/gm/gc/299171/2/

 

「おかげさま」「お互いさま」をもっと使います。