あなたは「具体的な事実」を扱っていますか?

今回はケーススタディからはじめてみましょう。まず、次のケースを読んでください。
営業部の部長が、部下のAくんに声をかけることにしました。というのも最近あまり成績が芳しくないからです。部長はなんとかAくんに成果を上げてほしいと思っています。

部長「Aくん、最近調子はどう?」

Aくん「あ、部長…。すみません。あまりよくありません」

部長「また苦戦しているんだね?」

Aくん「はい…。」

部長「今進行中の案件は?」

Aくん「5社あるのですが、いずれもはっきりしたお返事をいただけなくて」

部長「で、どうするつもり?」

Aくん「私からもう少しプッシュしたほうがいいかなと思う反面、今年に入ってうちのサービス内容が一新しましたし、あまり急かさないほうがいい返事をもらえる気もして…。」

部長「何を悠長なことを言っているんだ!そういうときはとにかく行動あるのみだよ!今週中にその5社に再度、足を運ぶんだ。昨年まで素晴らしい成績を上げていた君なんだから大丈夫!!がんばってくれ。応援しているよ。」

Aくん「はぁ…。ありがとうございます。」

どうもこのままではAくんの行動にあまり期待できそうにありません。さて、あなたがこの部長なら、こんなときどんな会話を創りだすでしょうか?

 

●成功するリーダーが実践していることとは?
先ほどの部長の会話には、一貫するある特徴があります。それは、「実際に起こっている具体的な事実を何一つ聞いていない」ということです。
モチベーション研究のスペシャリストであり、リーダーシップとモチベーションの向上についての著書『Succeed: How we can reach our goals』を持つHeidi Grant Halvorson博士は、自身が掲げる「成功する人はどこがちがう? 9つの行動パターン」のトップとして、「具体性」を挙げており、「成功するリーダーは、数値や具体的な行動などについて扱っている」と述べています。
もし、先ほどの部長がもう少し「具体的なこと」に意識を向けていれば、会話は変わっていたでしょう。
例えば、Aくんがあまり調子がよくないということを、部長はすぐに(成績を上げることに)苦戦しているとすぐに解釈していますが果たして本当にそうでしょうか?

もしかしたら、
「実は体調が悪い」
「プライベートな問題を抱えていて仕事に集中できない」
のかもしれません。

もし、部長が「調子がよくないってどういうこと?」と聞いていれば、
営業成績不振の意外な原因
もしかしたらA君自身すら気づいていない問題
を発見することができたかもしれません。

 

●具体的な事実こそが気づき、そして行動を促す
同様にその後の会話でも、部長は具体性を扱うことなく、とにかくAくんに行動させようと躍起になっています。おそらくこの部長は「このままではAくんは成績を上げられない、どうにかしないと」という想いでいっぱいになっているでしょう。
もしかしたら、
Aくんは相手にリクエストすることが苦手なのかもしれません。
Aくんには以前、せかしたことでうまくいかなかった経験があるのかもしれません。
Aくんは新しいサービスに対して何か不安などがあり、営業しにくくなったのかもしれません。
もし部長がもどかしさや焦りをぐっと飲み込み、Aくんの発言に対し、興味を持って、

「それぞれの案件は実際にはどんな状態なの?」
「先方が決断しきれない具体的な原因は何だろう?」
「具体的には次にはどうしようと思っているの?」
「成績を上げるときと苦戦するときでは何が違うんだろう?」
「それってどういうこと?」

などと問いかけていれば、さまざまな「事実」がはっきりとしてきます。
案外、私たちは自分が体験していることや周りで起こっていることをはっきりと捉えていないことがあります。その不明確さがなんとなくの躊躇や停滞を引き起こすのです。そんなとき、私たちは具体的な問いかけを通して「事実」を認識することができます。

 

https://allabout.co.jp/gm/gc/408737/2/

 

「事実」と直面することではじめて、さまざまな気づきや発見が促され、行動を起こすことができるのですね。