【間違えると恥ずかしい!】ややこしい日本語

●日本語ってややこしい!

英語、フランス語、スペイン語など、世界の言語と比べても驚くほど語彙数が多いのが日本語です。似たような意味の言葉もたくさんあり、文章を書くときに「あれっ? どっちが正しいんだっけ?」と迷うケースも少なくありません。迷うどころか、勘違いして(正しいと思い込んで)、誤った日本語を使っている人もいます。

そこで今回は、勘違いしやすく、間違えやすい日本語を紹介。誤った言葉を使わないためには、きちんと「正誤」を知っておく必要があります。ぜひ、この記事をきっかけに「日本語の正誤」に敏感になってください。

 

●うっかり誤用していませんか? 紛らわしい日本語

◆「翌(週)」と「来(週)」の違いは?

【原文1】
今週は営業成績がよくなかったが、翌週はなんとか盛り返そう。

この文章に違和感を覚える人は多いでしょう。文章の視点が「今」にあるにも関わらず、「翌(週)」が使われているからです。「翌」が使えるのは、過去か未来の一地点に視点を置いたときだけです。「今」「今日」「今週」「今月」など、「今」に視点を置いた文章を書くときには「翌」を使うことはできません。

 

【原文1を改善】
今週は営業成績がよくなかったが、来週はなんとか盛り返そう。

このように「翌週」を「来週」に変更すると、違和感が消えます。

ほかにも、いくつか例文を見ていきましょう。

 

× 今週の視察は中止となりました。翌週の火曜日に延期したく存じます。
○ 今週の視察は中止となりました。来週の火曜日に延期したく存じます。

「今(週)」に視点を置いているので、「翌(週)」と書くのはおかしいです。

 

× 中央自動車道は翌朝5時から集中工事規制に入ります。
○ 中央自動車道は明朝5時から集中工事規制に入ります。

この文章も「今」に視点を置いているので、「翌(朝)」と書くのはおかしいです。正しくは「明朝」です。

 

× 初月こそ好調でしたが、来月は一気に落ち込みました。
○ 初月こそ好調でしたが、翌月は一気に落ち込みました。

この文章は「過去の一地点」に視点を置いています。したがって、「翌(月)」を使うのが正解です。「来月」を用いると、違和感が生じます。

 

文章の視点がどこ(いつ)に置かれているかを見極めながら、「翌」と「来」を正しく使い分けましょう。

 

◆「制作」と「製作」の違いは? 

「制作」と「製作」の違いは、作られるものによって変化します。「制作」はおもに芸術性を伴う作品——たとえば、絵画や彫刻、陶芸、工芸品、映画、個展や展覧会に出品する作品など——に使われます。「クリエイティブなモノを作るとき」と考えるといいかもしれません。

一方の「製作」はおもに物品——たとえば、精密機器、工業製品、雑貨、日用品など——に使われます。クリエイティブな要素の少ない「実用的なモノを作るとき」に使われます。

 

もっとも、世の中には「芸術」と「実用」の境界線がわかりにくいモノもたくさんあります。対象となるモノの性質をよく見極めながら、あるいは、業界内での慣習(使われ方の傾向)を見定めながら、使い分けるようにしましょう。

 

◆「退職」と「離職」の違いは?

勤めていた会社を辞めることを広く「退職」といいます。厳密には、会社から契約解除を通達された場合は「解雇」、それ以外の辞め方を「退職」と分けて使うことが少なくありません。

一方の「離職」は、ハローワークなどの公的機関で手続きするときに使われる呼び名です。広く「退職や失業によって職務を離れること」を指します。

したがって、公的機関での手続きを除くシチュエーションでは「退職」を使う、と心得ておきましょう。会社を辞めるときに、お世話になった仕事関係者に送るメールやハガキは「離職のご挨拶」ではなく、「退職のご挨拶」が正解です。

 

◆「おざなり」と「なおざり」の違いは?

「おざなり」と「なおざり」を混同して使っている人は少なくありません。似たシチュエーションで使われる言葉ですが、厳密には意味が異なります。

「おざなり」は、「大雑把なさま」「中途半端なさま」を意味します。たとえば「小林さんの対応は、いつもおざなりだ」と書いた場合、<対応はするものの、その対応が大雑把であったり、中途半端であったりする>という意味です。

一方、「なおざり」は、「そのままの状態で放っておく」「避けて通る」「必要な対応を怠る」というニュアンスの意味です。「小林さんのなおざりな態度に失望した」と書けば、<小林さんは対応すらしないで、状況を放置した>という意味です。

たとえば、この記事の筆者(山口拓朗)の原稿が大雑把だったり、中途半端だったりした場合、「山口さんの仕事はおざなりだ」と書き、筆者が原稿すら書かずに放置していた場合、「山口さんの原稿はなおざりだ」と書くのが適切です。

 

◆「みっともない」と「みっともありません」って何が違うの?

次の①と②は、どちらが正しい表現でしょうか?

 

① それは、みっともありませんでした。
② それは、みっともないことでした。

正しい表現は②です。「みっともない」は「みっとも+ない」ではなく、「みっともない」でひとつの形容詞です(「せつない」「つまらない」などと同じです)。したがって、「みっとも」だけを取り出して使うことはできません。「みっとも」だけを都合よく取り出して「みっとも+ありません」とした①は誤用です。

 

同様の理由で「みっともいいものではない」や「みっともよくない」「みっとも悪い」も誤用です。ただし、近年、これらの表現を使う人が増えてきているようです。つまり、勘違いしている人が増えてきているということ。とはいえ、これらは正しい言葉ではありません。「みっともない」以外の表現は避けるようにしましょう。

 

なお、「みっともないことでした」をより丁寧に書くときは「みっともないことでございました」と書きます。「みっともございませんでした」と書かないよう注意しましょう。

 

◆「とんでもございません」と「とんでもないです」って何が違うの?

次の①と②は、どちらが正しい表現でしょうか?

 

① とんでもございません。
② とんでもないです。

正しい表現は②です。先ほどの「みっともない」と同じで、「とんでも+ない」ではなく、「とんでもない」でひとつの形容詞だからです。したがって、「とんでも」に「ございません」をつけた「とんでもございません」は誤用です。同様に「とんでもありません」も誤用と考えるのが筋です。

 

ところが、2007年(平成19年)に文部科学省直下の文化審議会が発表した「敬語の指針」には以下のような記述があります。

 

「とんでもございません」(「とんでもありません」)は、相手からの褒めや賞賛などを軽く打ち消すときの表現であり、現在では、こうした状況で使うことは問題がないと考えられる。

また、「とんでもないです」を丁寧に書くと「とんでもないことでございます」となりますが、この表現について、前述の「敬語の指針」には以下のような記述があります。

 

「とんでもないことでございます」 と言ったのでは、「あなたの褒めたことはとんでもないことだ」という意味にも受け 取られるおそれがあるので、注意する必要がある。

この見解を踏まえると、①の「とんでもございません」と②の「とんでもないです」はどちらも使って構わない、という結論に達します。時代の移り変わりによる言葉の変化といえるでしょう。①を基本にしながら、より丁寧な言い方をするときには②を使うのがスマートかもしれません。(※)

 

※ ただし、①の「とんでもございません」を誤用だと解釈している人も少なくないことは知っておくべきです。そのうえで、使うか使わないかを判断をしましょう。

 

◆「〜しづらい」と「〜しずらい」ってどっちが正解?

次の①と②は、どちらが正しい表記でしょうか?

 

① 理解しずらい
② 理解しづらい

正しいのは、②の「理解しづらい」です。漢字で考えると一目瞭然。「理解しづらい」=「理解する+辛い(つらい)」です。辛いには「~するのが難しい」という意味があり、読むのが難しいから、「読みづらい」なのです。「分かりずらい」「書きずらい」「動きずらい」「しずらい」等々、無意識に「~ずらい」を使っている方は十分に注意しましょう。

 

もっとも、「現代仮名遣い」では、「ず」と「づ」を同音扱いにして、文章では「ず」で統一しよう、という動きがあります。ただし、少なくとも現時点では「~ずらい」と書かれると、違和感を抱く人が多くいます(語源を無視した書き方につき)。無意識に「~ずらい」を使っていた方は、これを機に「~づらい」を使いましょう。

 

●本来の意味? それとも慣用? 求められるバランス感覚!

「ニュアンスが伝われば、どちらでも構わないのでは?」と考える人もいるかもしれませんが、ビジネスシーンで誤った日本語を使うと「◯◯さんは日本語を知らない」と思われて、恥をかくほか、その人自身の評価を下げてしまう恐れもあります。

もちろん、言葉は生き物です。いくら本来の意味と異なる意味で使われていたとしても、その使われ方が世間一般に広く浸透した時点で、それが「正しい」と容認されるケースも少なくありません。現に、私たちがあたり前のように使っている言葉のなかにも、誤用から転じたものが無数にあります。

したがって、求められるのは、バランス感覚です。言葉の本来の意味を把握すると同時に、どういう表現が慣用化してきているかを見定めたうえで、使う言葉を選ぶ、ということです。

誤用とわかりきっている言葉を使うはいかがなものかと思いますが、「正しさ」に固執しすぎるのもスマートではありません。読む人に勘違いされそうな気がするときは、あえてその言葉を使わずに、何か別の表現を選ぶ、という配慮も必要です。言葉のバランス感覚も、ビジネスパーソンに必要な資質のひとつと心得ておきましょう。

 

https://next.rikunabi.com/journal/entry/20160624_1

 

表現力や言葉は大事ですね。