三色ボールペンでコーチング・組織変革!

あなたは本や書類を読むときに、筆記用具を持って読んでいますか? もし持っているとしたら、どんな筆記用具を使っているでしょう?
実は読むときに、あなたがある筆記用具を持って読むだけで、あなたの読み方が劇的に改善します。その筆記用具とは、右の写真にある「三色ボールペン」。
たかが「三色ボールペン」というなかれ。この道具によって、あなたの読み方はもちろん、あなたの脳の使い方、さらにはコーチングまで改善されるのです。
この三色ボールペンにスポットライトを当てたのは、齋藤孝明治大学文学部教授。2002年に発売された『三色ボールペンで読む日本語』は三色ボールペンが付いた書籍として注目を集め、これまでに35万部以上を売り上げるベストセラーとなりました。
齋藤教授が提唱する「三色ボールペン方式」はきわめてシンプルな方法です。本や資料を読みながら、次のような色の使い分けに基づいて線を引いていくのです。

■青:客観重要(「まあ大事」というところに引く。自分の主観というよりは、誰が見てもある程度大事であろうというところに、気楽な気持で引く)

 

■赤:客観最重要(客観的に見て「すごく大事」と思ったところに引く。自分の独りよがりではなく、誰が見てもここが最重要であろうという箇所に引く。全文を読む余裕がない人にも、その赤線部だけを見せれば文章の主旨が伝わる、という箇所に引く)

 

■緑:主観大切(自分が勝手に「おもしろい」と感じたところを引く。文章の客観的な要約とはまったく無関係に、自分の好みでおもしろいと思ったり引っかかりを感じたところに自由に引く)

 

三色ボールペンは究極の脳トレ

「受験勉強のときに線を引いたり、蛍光ペンでマークしましたよ。まあ、確かに役には立つとは思いますけれど……」
この三色ボールペン方式を“読書のときに役立つコツ”程度にとらえると、こんな反応が返ってくるかもしれません。しかし、この方法が巷で流行している「脳トレ」よりも、身近にできて、しかもより本質的な脳のトレーニングだとしたらどうでしょう?
「この三色ボールペン方式の最大のねらいは、主観と客観を切り替える技を身につけることにある。」
「文に線を引くということを習慣化させるだけでも、相当な効果がある。しかし、三色ボールペン方式では、『主観と客観を切り替える』という非常に基本的かつ高度な能力が徹底的に養われる。」
「主観と客観を切り替える」。平たく言ってしまえば、「意見と事実を区別する」。さらには、「自分の立場と相手の立場を切り替える」ことといってもいいでしょう。
企画やビジネスプランを考えたり、会議を進めるときに、「意見と事実を区別する」ことは大事です。また、マネジメントにおいて部下や他部門の立場を理解することは必要不可欠です。セールスはもちろんビジネス全般において、「お客様の立場に立つ」ことの重要さは言うまでもないでしょう。
しかし、重要だとは頭でわかっていてもなかなか実践できないのが現実でしょう。それを鍛えてくれるのが三色ボールペンなのです。

「主観と客観を分けて考えろ」と言われても、そう簡単にできるものではない。しかし、「主観と客観で色を分けて線を引け」と言われれば、否応なく区別することになる。それをひたすら繰り返していれば、今度は主観と客観を切り替えるのが当たり前になってくる」

 

●相手にとって重要なことを聴こう

三色ボールペンで鍛えられる「主観と客観を切り替える」ことは、上司が部下の話を聴いたり、コーチングするときにもとても大事です。たとえば、部下が見込み客への訪問から帰ってきて、あなたに次のように報告を始めたとしましょう。
「私が持っていった事例にとても関心を示されて、かなり突っ込んだ話ができました。お客様とグッと距離が近づいたように思います。また、これまで埼玉支店の案件でしたが、新たに千葉支店の案件にも広がり、商談規模は大きくなりそうです。」
さて、あなたはこの話を聴きながら、どの部分に何色の線を引きますか? 
多くの上司は自分の興味が向く部分「緑」だけに興味がいって線を引きがちです。しかも、「緑」なのにかかわらず、部下にとっても重要な「赤」「青」と勘違いしています。たとえば、「商談規模が大きくなりそうです」に自分の興味が向いて、「どれぐらいの規模になりそうだ?」と質問するということはよく起こります。

 

まずは、部下にとって重要な「赤」「青」と自分にとって興味が向く「緑」とを区別すること。そしてさらに、部下にとって最重要な「赤」に気づくことです。そのときに大事なポイントが、相手から伝わってくる気持ちやエネルギーです。

 

「赤を引くコツは、その文章から力が伝わってくるかどうかである。論理的にもっともよくまとまっているから赤で引くというのも悪くはない。しかし、優れた文章には気持ちがこもった鋭く迫っている重要な文章というものがある」

ついつい、話の筋や論理展開に意識がいってしまいますが、それだけではなく話している部下の気持ちや力に意識を向けることがポイントです。


そして、「赤」「青」「緑」の区別がついたら、「緑」に突っ込みたくなるのを抑えて、「赤」の部分に質問を投げかけたりして突っ込んでいきましょう。
ぜひ、「緑」のコーチングから脱却し、「赤」のコーチングを目指してみてください。

 

三色ボールペンは「意識の見える化

「なるほど。これからは、赤・青・緑を意識するぞ!」
そう意気込んでいる人も多いと思いますが、「意識する」にとどまらずに、ぜひ実際に三色ボールペンを手に入れて、使ってみてください。三色がなければ、まずは二色ボールペンや四色ボールペンでもいいでしょう。なぜなら、目に見える形にしていく、つまり「見える化」が大事だからです。

三色ボールペンのカチカチと入れ替わる音が重要だ。カチッという音で、脳が客観から主観、主観から客観へとスイッチする感覚が生まれる」
三色ボールペンは脳の働きを外に出す効果がある。色を替えるカチカチという音が、あたかも脳の中のギアチェンジをする音のように感じられてくる。これは錯覚といえば錯覚だが、この感触が技化されれば、現実の能力は向上する
なかには、色やヴィジュアルな感覚が弱い、苦手という人がいるかもしれません。そういう人は、「赤」「青」「緑」を温度や手触り感などの感覚に変えてみるといいでしょう。たとえば、「赤」は熱い、「青」は冷たい、「緑」は生温いといった具合です。また、「赤」は辛い、「青」は酸っぱい、「緑」は爽やか、といった味覚に置き換えることもできるでしょう。

 

また、本や資料を読むときはもちろん、会議で人の話を聴いているときにも、手に三色ボールペンを持って、色を切り替えていきましょう。「ようやく青になってきた」「ここは赤だ!」「ここは青、いや緑だなあ」など、心の中でつぶやきながらカチカチと切り替えるのです。いつの間にか、実際の三色ボールペンがなくても、勝手に指が動き出している自分に気づくでしょう。

さらにチームや組織内で、この三色ボールペン方式が共有されると、一気にコミュニケーションの質が高まります。「今の話で『赤』のところはどこだろう?」「それぞれの『緑』を共有してアイデアを出そう」「ここからは『赤』なのでよく聴いてください」といった対話ができるとしたらどうですか? コミュニケーションがまさにカラフルになり、組織の活性化にもつながっていくでしょう。

 

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まずは、この記事を印刷して、三色ボールペンで線を引くところから始めてみます。