「やる気スイッチ」を入れる2種類のモチベーション

●「やる気スイッチ」がすぐに切れてしまうのはなぜ?

勉強や仕事……どれもやらねばならないことなのに、なぜだかやる気が湧いてこない。そんな自分に気づくことはありませんか? そんなときには、自分自身の「やる気スイッチ」が安定して作動していないのかもしれません。
「今やらなきゃ!」「頑張らなきゃ!」と鼓舞すれば、やる気スイッチはすぐに入ります。

しかし、そのやり方では即効性はあってもパワーが続かず、あっという間に切れてしまいます。

では、やる気スイッチを持続的に安定して入れるには、どうしたらいいのでしょう?

大切なのは、「モチベーション」の見直しです。モチベーションは「動機づけ」とも呼ばれますが、これには2つの種類があるのです。
一つは「内発的動機づけ」。これは、目標を達成する喜び、向上心、自信の強化、知的好奇心の満足など、内発する誘因によってやる気を出すことです。「『ここまでやった』という達成感を感じたい」「困難を乗り越えて自信をつけたい」「未知の分野を知りたい」というように、自分の心から湧き出るモチベーションを意味します。
もう一つは「外発的動機づけ」。これは、お金や評価、地位、名声、叱責など、外発的な誘因によってやる気を出すことです。「おこづかいアップのためにテストを頑張ろう」「同期で一番の出世頭と言われるためにバリバリ働こう」「いい大学に入って、みんなをあっと言わせてやろう」。

こういった、外からの刺激によってやる気を上げるモチベーションを意味します。

 

●「外発的動機づけ」だけでもダメ

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「有名校」「カッコいい仕事」――でも、やる気が続かないのはなぜ?
「やる気スイッチ」は、外発的動機づけだけに偏っていても、長く作動しません。
たとえば、勉強熱心な親の中には、「クラスで一番になったらカッコいいよ」「全落ち(志望校に全部、落ちること)したら、恥ずかしいだろう?」といった外発的動機づけで、子どもに勉強させる人がいます。たしかに、短期で結果を出す試験勉強などには、効果的かもしれません。
しかし、その動機づけだけに頼っていると、本物の学力が伸びていかず、いずれはジレンマに陥ることになります。

「問題が解けることって楽しい!」「知らないことを覚えるのって楽しい!」といった内発的動機づけが高まらないと、「学ぶこと」そのものがつらくなってしまうからです。

特に、一つの分野を深く研究する大学などでは、なおさらです。実際に、「この分野を専門的に学びたい」という内発的動機づけを育てず、「難関校合格」という外発的動機づけだけで受験勉強ばかりしてきたために、入学後に急にモチベーションを失って、大学を辞めていく学生もたくさんいます。

 

●「内発的動機づけ」だけでもダメ

とはいえ、内発的動機づけだけに頼っていても、長続きはしません。たとえば、私がやっている文筆やカウンセリング仕事のなかには、面白くてやりがいがある反面、スズメの涙ほどの報酬しかもらえない仕事がたくさんあります。そういった仕事を一旦引き受けたとしても、やはり長くは続けられません。
挑戦しがいがあり、知的好奇心が満たされるため、「いい経験」にはなるのですが、あまりにも低い報酬に嫌気が差し、結局は数回やれば「もう十分」と思ってしまいます。「お金のためだけに働いているのではない」と思っていても、やはりそれなりの報酬がついてこないと、仕事を継続できないのが実感です。
したがって勉強や仕事へのやる気が持続しない場合には、「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」のどちらも大事。やる気スイッチが安定して入らない場合には、そのどちらかが欠けているのかもしれません。


●やる気を持続させるために必要なこと

たとえば、子どもに勉強をさせたいときや、部下に仕事を任せたいときには、この2種類のモチベーションをほどよく満たせているかを、振り返ってみるといいでしょう。
ご褒美で釣ったり、プライドをくすぐって子どもに勉強をさせても、学ぶの楽しさを教えてあげなければ、子どもには学ぶ意味が分からず、やめたくなってしまうでしょう。

一方、勉強の楽しさばかりを熱心に伝えても、よい成績をとったときにちゃんと褒めたり、まったくご褒美を与えない状況では、子どもはやりがいを失ってしまいます。
成績のよい社員に恩賞を与えても、上司がその仕事ぶりに関心を持たず、成長欲求を満たす働きかけをしなければ、社員のやる気は育ちません。一方、精神論ばかりを強調されても、仕事の成果が報酬や昇進、社会的評価などに結びつかないようでは、やはり社員はモチベーションを持続させられないと思います。

 

 

内発的動機づけと外発的動機づけは、両方とも大切なモチベーション。この2つのモチベーションを生かして、やる気を持続させていきましょう。